[短編] 時の雨は優しい虹となる。
「うそ。結明ったら、傘持って行かなかったの?今朝、ちゃんと言ったわよ?」
「うん。そうなの」
今は家族と夕食中。とても温かいご飯になんだかほっとしていた。
結局、彼が去ったあと、雨はすっかり止んでいて私は雨に濡れることなく、家へと帰ってきた。
テーブルには、ママの手作り料理がズラリと並んでいる。どれも美味しそう。
私は手元にあった味噌汁を一口だけ飲んでから、ママにふと聞いていた。
「ねぇ、ママ。もし後悔があって、過去に戻れたらどう思う?」
するとママは考えながら、ウインナーを一口かじってこう答えた。
「うーん。ママは戻りたくない」
「え。どうして?」
「私の母がよく言ってたの。自然や時の流れに逆らうと、自分にそれが罰として返ってくるんだって」
「それにタイムスリップなんて出来ないだろうから、後悔しないように生きなさいって」
ママは昔の話ができて嬉しいのか懐かしいわね、なんて言いながら夕食を食べていた。
私は軽く聞いただけだったけれど、ママの言葉で自分の考えが揺らいだ気がした。
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