[短編] 時の雨は優しい虹となる。
翌日の放課後。
私は掃除中の宇星に変なことを聞いていた。
「ねぇ、宇星。タイムスリップってほんとに在るのかな?」
雑巾で窓を拭いている宇星は難しい顔をした。
「どちらとも言えないよ。ただ、タイムスリップを便利なものだとは思えない」
「それに、何かに頼りすぎるのは良くない。私が思うのはそれだけ」
宇星はいつもノリが良くてお調子者な子だから、こんなに真剣な答えが返ってくるなんて。
私の友達はいい人だな。そう思ったのと同時に私の中で覚悟ができた。
タイムスリップという便利なものに頼るのは良くない。宇星の言うとおりだ。きっと逃げてちゃダメなんだ。
「ありがと!また明日ね!」
私はそれだけ言って、校舎裏の庭へと向かう。
そんな私の姿を宇星が切なく見ていたなんて、私は知るよしもなかった。
階段を下りていって、下駄箱ですぐにはき替えてあの庭へと走った。
庭へ着いても、時雨くんの姿は見えない。そうだ。明日にならないと時雨くんは現れないんだ。
タイムスリップに使う時間の扉が開くのは、明日だと言っていたし。頭では分かっていたけれど、心は強く願っていた。
時雨くんに会いたい。会わせてほしい、と。
ママの言葉、宇星の思い。それを聞いた今、心には勇気が芽生えていた。
何かに頼らず、失恋した思いと向き合うのは不安で仕方ない。それに怖いんだ。
それでも、きっと大丈夫。私は一人じゃないから。私はもう逃げたりしないから。強くなれたから。
きっと大丈夫だ。きっと。
そう強く思ったとき、
「結明」
と私を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ってみると、そこには狐のお面を付けたいつもと変わらぬ時雨くんがいた。
「し、時雨くん!実は!」
話したいことがあると言いたいのに、また声にできない。彼の瞳が、私を見据えていたから。
時雨くんは不思議な人だ。怖いと思わないし、むしろ話していたいと思う。それに、今じゃすごく感謝している。
私を見つめる彼の瞳は、もう私の覚悟を察しているようだった。
「決めたんだね?タイムスリップなんかしないと」
その言葉に、私はゆっくりとうなづいた。時雨くんには悪いけど、きっとダメなんだ。逃げるのは良くない。
今の私なら向き合える。大谷くんに振られたあの日と。
すると、時雨くんは気が抜けたように
「分かった」
と告げた。
私はそんな時雨くんを横目にしながら、持っていた荷物を握る。
「私、いつも逃げてたの。後悔を消したいと言って、失恋と向き合わなかった。過去には戻れないし、後悔を消すことだって無理」
「でも、だからこそ。今の私しか出来ないことがある。それを教えてくれたのは時雨くんだよ」
私は言いたいことだけを言い残し、近くにある学校の校門へと走った。
最後に笑ってから、こう告げた。
「時雨くん!ありがとー!」
そして、私は家へと走った。新しい私に出会えた嬉しさとと共に。
私は掃除中の宇星に変なことを聞いていた。
「ねぇ、宇星。タイムスリップってほんとに在るのかな?」
雑巾で窓を拭いている宇星は難しい顔をした。
「どちらとも言えないよ。ただ、タイムスリップを便利なものだとは思えない」
「それに、何かに頼りすぎるのは良くない。私が思うのはそれだけ」
宇星はいつもノリが良くてお調子者な子だから、こんなに真剣な答えが返ってくるなんて。
私の友達はいい人だな。そう思ったのと同時に私の中で覚悟ができた。
タイムスリップという便利なものに頼るのは良くない。宇星の言うとおりだ。きっと逃げてちゃダメなんだ。
「ありがと!また明日ね!」
私はそれだけ言って、校舎裏の庭へと向かう。
そんな私の姿を宇星が切なく見ていたなんて、私は知るよしもなかった。
階段を下りていって、下駄箱ですぐにはき替えてあの庭へと走った。
庭へ着いても、時雨くんの姿は見えない。そうだ。明日にならないと時雨くんは現れないんだ。
タイムスリップに使う時間の扉が開くのは、明日だと言っていたし。頭では分かっていたけれど、心は強く願っていた。
時雨くんに会いたい。会わせてほしい、と。
ママの言葉、宇星の思い。それを聞いた今、心には勇気が芽生えていた。
何かに頼らず、失恋した思いと向き合うのは不安で仕方ない。それに怖いんだ。
それでも、きっと大丈夫。私は一人じゃないから。私はもう逃げたりしないから。強くなれたから。
きっと大丈夫だ。きっと。
そう強く思ったとき、
「結明」
と私を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ってみると、そこには狐のお面を付けたいつもと変わらぬ時雨くんがいた。
「し、時雨くん!実は!」
話したいことがあると言いたいのに、また声にできない。彼の瞳が、私を見据えていたから。
時雨くんは不思議な人だ。怖いと思わないし、むしろ話していたいと思う。それに、今じゃすごく感謝している。
私を見つめる彼の瞳は、もう私の覚悟を察しているようだった。
「決めたんだね?タイムスリップなんかしないと」
その言葉に、私はゆっくりとうなづいた。時雨くんには悪いけど、きっとダメなんだ。逃げるのは良くない。
今の私なら向き合える。大谷くんに振られたあの日と。
すると、時雨くんは気が抜けたように
「分かった」
と告げた。
私はそんな時雨くんを横目にしながら、持っていた荷物を握る。
「私、いつも逃げてたの。後悔を消したいと言って、失恋と向き合わなかった。過去には戻れないし、後悔を消すことだって無理」
「でも、だからこそ。今の私しか出来ないことがある。それを教えてくれたのは時雨くんだよ」
私は言いたいことだけを言い残し、近くにある学校の校門へと走った。
最後に笑ってから、こう告げた。
「時雨くん!ありがとー!」
そして、私は家へと走った。新しい私に出会えた嬉しさとと共に。