いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「うん。 陰でどれだけ何を思われてもね、目の前で話す時に言わせないような自分になろうって」
言いながら真衣香はゆっくりと進んでいた歩みを止めた。
つられて、手を繋ぎ合っている坪井も立ち止まる。
人通りを避けるようにして、歩道の端に寄ってみた。
そして、
「ありがとう、坪井くん」
と。
背伸びをして耳打ちをすれば、坪井が突然のことに驚いたのか身を固くした。
「坪井くんが見ててくれて、坪井くんが凄いよって言ってくれるなら。 それだけで延々と続くだけだった会社での毎日がね、急に明るくなったんだよ」
「……はは、んな大袈裟な」
「大袈裟じゃないよ。 そしたら言葉も出てくるんだよ、誰かの目を見て自分の意見を言う勇気が出るの」
スッキリした顔で笑う真衣香を見つめて、坪井は髪の毛をクシャクシャとかき乱した。
「あー、もう、さっきから今日のお前一段と可愛いと思ったらアレか〜」
「え?」
「自分しか戦えないじゃん、自分自身の劣等感とか葛藤とか」
目を合わせずに、坪井は何か納得したようにため息まじり話出した。
「そんなのから逃げないで向き合って、乗り越えていこうって腹括った人間、そりゃ目奪われるよな」
急にどうしたの? と聞く真衣香に坪井はこの上なく甘い笑顔を見せる。
そしてそれ以上に甘く優しい声で言った。
「小野原さんと話してるお前最高にかっこよかった」
「え!? み、見てたの!?
(さっきまで全然知らないフリしてたのに!)