いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「イメージ通りの俺も存在するのかもしれないけどさ、違うのも、いるんだよね。何だろ、学生の頃ってもっと何でもできる気がしてたけど机上の空論ってゆーの? そんな感じ」
頼りない声に真衣香の胸は言いようのない痛みを感じていた。
苦しくて、けれどどうしようもなく嬉しくて幸せな痛み。
こんな甘い痛みを真衣香は知らなかった。
「私ね、ずっと坪井くんは別世界の人で何でもできてみんなの人気者で……同期なのに何でこうも差があるのかなぁって思ってたよ」
「……だよね、ガッカリした? 守るとか言って口だけで守らないし情けないし」
「どうしてそう思うの?」
思ったよりも冷静な声が出て、聞き返すと坪井を息を飲み込んだ後何かを声にしようとしたようだが。
また更にそれを飲み込んでしまった。
「今もね、すごくドキドキしてるの、私」
自然と腕が動いて、俯き気味の坪井の頭を撫でた。
いつもと逆の行動になぜだか愛おしさが増す。
「どんな坪井くんを見てもドキドキする自信があるよ。 ね、好きってそう言うことなのかなぁって私思うよ」
何も言ってくれない坪井になぜか真衣香が不安を感じるこはなかった。
今この瞬間、なぜだか、坪井はとても頼りなく。まるで真衣香にしがみつく幼い子供のように思えてしまっていたからだ。
(変だよね、ついさっきまであんなにドキドキしてたくせに)
「約束。どんな坪井くんも見せてね? 不安な時はその都度伝えるよ、大好きって」
真衣香が話し終わっても坪井は無言のままだし、真衣香といえば坪井の頭を撫で続ける己の手をいつ引っ込めればいいのかわからなくなっていた。
(ど、どうしよう!? 坪井くんていつもどうしてたっけ!?)
よく頭を撫でてくれる坪井を思い出すようにして頭の中をフル回転させる。
どう考えても一瞬だったように思えて、慌てて手をどけようとした。
「わ!?」
しかしその手は力強く坪井に掴まれて動かなくなる。