いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
苛立ちを抱えたままマンションを出て少し歩くと、街灯の下、不明瞭な影。
静かに一歩一歩近付けば確かに見える、しゃがみ込む女の姿。
真衣香だ。
「優里ぃ……」
泣きじゃくりながら、電話をしてるようで友人の名を呼んでいる。
どんな顔をして泣いているんだろう。間近で見てしまった真衣香の泣き顔を思い出して、また、胸の内が軋んだ。
深く息を吐き電柱にもたれかかるようにして、その様子を隠れて見ている、自分のこのザマときたら。
(コート、どうすんだ、寒いだろ)
真衣香のコートを持つ手に力を込めた。
初めて手を繋いだ夜、細い指先は随分冷えていた。触れ合う手の中で少しずつ暖かくなっていった柔らかな感触を、なぜだろう、よく覚えている。
小さく華奢な分、きっと今自分が体感している寒さよりも堪えているのではないか。
そう思うのに、足は動こうとしない。
これを手渡しに行ってどうする。
コート忘れてたよ、と。いつもみたいに笑って渡してやるのか。
(……いや、無理だろ、見れる自信がない)
あの泣き顔を、だ。
さらには、何事もないように笑う自信もない。
『こんなはずではない』そればかりが連なって襲いかかってくる。