いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
手離さなければいけないのに、できなくなっていた予感しかしない。
何故なら。
『これ以上は面倒なことになるな』の意味がまるで違うからだ。
向けた言葉じゃないから。
言い聞かせる言葉だったから。
理由は簡単だ。
大切にできる自信もなければ、恐怖を断ち切る覚悟もないのだから。
(いや、でも、あいつへの言葉や態度が嘘ばっかじゃなかったんだとしても変わんないでしょ)
それなりにうまく生きて行くためには、物事においても感情も、優先順位は冷徹に、冷静に一瞬で判断できなければいけないと思う。
悩むことは、これまで少なかったのに。
間違う程に、揺れることはなかったのに。
早く呆れてくれと思っていた、見限って、くれと願っては。
そばにいて欲しいと思った。
その矛盾にどうしようもないくらい吐き気がしていたことも、また、どうしようもなく癒されていたことも。
どちらも確かなんだ。ただ、選ぶべきものを結局はねじ曲げる事ができなかった。
小さくなっていく後ろ姿。
角を曲がって、見えなくなった。
あの角を曲がれば人通りは急激に増えて、駅までは人目もじゅうぶんにある。
(コート……は、返してやるの月曜だなぁ)
それまでに、整えておかなくてはいけない。
今、とりとめもなく、流れ続ける感情を。
そして、真衣香から向けられるであろう嫌悪や憎悪にも、変わらない笑顔を返せるように。
大丈夫だ。
そうしていれば、また、いつもどおりだ。