いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
坪井が在籍している営業部に小さなバケツ、その他雑巾やウェットティッシュなどを持って向かう。
各部署の鍵はそれぞれの課の中で数名と、予備で総務が保管している。
真衣香はその予備の鍵を使用し、営業部のドアの鍵を開けようとした。
……が、既に開いているではないか。
(ん? 珍しいなぁ……週末忙しかったから?)
不思議に思った真衣香が中に入ると営業事務の女性社員が2名既にパソコンに向かって仕事をしていた。
「あ、おはようございます。 失礼します」
真衣香が声をかけると2人はチラリとこちらを向いて。
「誰です?」
「総務。 なんか掃除してんでしょ毎日」
と、ひそひそ声が聞こえてきた。
聞こえているからひそひそ声とも言い難いのだけれど。
真衣香は口元を何とか動かし、笑顔を作る。
「すみません、少し拭き掃除をしようかと思ったのですが別の日にしますね」
仕事中に、しかも早朝から来ていたのなら急ぎなのだろう。
気を散らせてはいけないと出直そうとした真衣香にむけて、
「ねぇ〜、総務ってぇ毎日掃除なんてできちゃうくらい暇って本当なんですね」
2人のうちの、恐らく真衣香よりも若いであろう女性社員がサラサラの茶色いロングヘアを指で梳かしながら言った。
「……すみません。 邪魔をしてしまって」
こうなると、余計なことを言っては長引く。
そう考えた真衣香は小さな声で謝罪の言葉を口にした。