いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「暇なら手伝ってくれません? 同じような給料でこうも仕事量違うの結構テンション下がるんですけど」
「え!? あ、できることがあるなら……」
少し考え込んでしまっていた真衣香は、思わぬ言葉にハッとなり姿勢を正した。
相手は恐らく、後輩にあたるのだけれど。
華やかな外見をした人を前にすると萎縮してしまう。
地味で冴えない自分が際立ってしまうようだから。
そんな感覚はもうずっと、学生の頃から消えてはくれない。
『できることがあるなら』と、大真面目に答えた真衣香を、きょとんとした顔でサラサラロングヘアの女性は眺めて。
「いや冗談ですよ、できることないじゃん」
バカじゃないの? とでも、付け加えられそうな呆れたような声で言い放たれた。
それを制止するかのように小野原が言う。
「こらこら森野さんそこまで。 もうすぐ営業来ちゃうよ、それまでにミスった伝票訂正終わらすよ」
「もう行ってね」というような目線が、小野原から送られてきたので真衣香は小さく会釈をして、逃げるように営業部を後にした。
ふぅ、と。
大きな溜息を吐き出して、
ゆっくりエレベーターを目指して歩いていると。
目の前が暗くなる。
「……ひゃ!? な、な……んっっ」
そのまま口元を押さえて力強く引き寄せられた。
エレベーターに向かう間にある自販機のスペース、その壁に押し付けられる形で動きは停止した。
始業前なので薄暗く、よく見えない。
けれど。
(あれ、このにおい)
さわやかな柑橘系の、香り。
「つ、坪井くん?」
口を塞がれてるので、もごもごと何とか名前を呼んでみる。
すると口元を塞ぐ手が緩められた。
……見上げると。