いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
さすがの八木も、坪井に対して返す言葉が見つからないようだ。
歩き出した坪井が横を通り過ぎようとしても、沈黙が続いている。
すぐ近くに気配を感じて横を見上げると、坪井と目が合った。力無い弱々しい笑みに胸が軋む。
その痛みを振り切るように目を逸らした真衣香は、八木の腕に頬を擦り付けるようにして顔を隠した。
パタン、とドアが閉められたあとも、動くことができないでいると頭にポンっと軽く八木の手が触れる。
「意味がわからん、マジでどーなってんだ、あいつは」
八木の呆れた声が響く。
「おい、もう行ったぞ坪井」
ゆっくりと顔を上げると「あーあ、ったく。またこんな泣きやがって」そう言って、涙を手のひらで拭うように真衣香に触れたあと、困ったように頭を掻く。
そしてしがみついていた真衣香から距離を取った。
腕を組んで、目線に合わせるように上体を折った八木。
そして、まるで自分に言い聞かせるかのように、ゆっくりと話し始めた。
「あのな、お前は手のかかる後輩で、可愛がってきたって言っても妹どころか実家の犬を重ねて見てたんだけどな。 いやマジで」
少し失礼なセリフ。
真衣香は涙は止まらないままだと言うのに、少しだけ笑い声が溢れそうになってしまう。
しかし次に続いた声がやけに真剣だったので、真衣香も口元に力を込めた。
「悪いな。 今思ってること正直に言うぞ」
「……八木さん?」