いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
再び距離が詰められて、真っ直ぐで強い視線が真衣香を射抜く。
「あ、あの……」
あたふたする真衣香の毛先に指先で触れる。
くるくると感触を確かめるように遊び、次に首筋を撫で、やがて流れるような八木の指先がサイドの髪にたどり着く。
それを隠れていた耳にかけ、露わにさせた。
「俺は、お前を気に入ってる」
真衣香の、その、耳元に囁く。
確かに声が届くように。
「んで、可愛い奴だと思ってる。 それをあんな身勝手な行動で振り回されたくないし、ついでに泣かされてんの見るのも癪に障る」
怒りが滲んでいる言葉とは裏腹。八木は、優しく真衣香の目元に触れた。まだ止まってはくれない涙が溢れ出す前に拭う。
「さっきの、アレ。 お前のこと好きだって、坪井の言葉信じるのか? 信じねぇのか?」
その二択を迫られるならば、今の真衣香の答えは決まっていた。
「信じない……信じられて、いないと、思います」
「だったらそれでいい、使えるもん使って過去にしろ」
「つ、使えるものって……」
戸惑う真衣香に「わかるだろが、流れ的に」と、穏やかな声が返ってくる。
「もっとズルくなって要領良く生きろって」
「要領良く?」
聞き返すと八木は「ああ、そうだ」と、大きく首を縦に動かした。
「少しでも気が紛れるなら、あのくだらん噂なんて関係なく、ずっと俺といればいい」
「ずっとって……そ、そんなに、頼れません……」