いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
(でも、そんなのダメだよ、おかしい)
ぱちぱちと何度も瞬いて、目に溜まった涙を無理やりに落とす。
次の涙は溢れさせまいと、唇を噛んで。
声を振り絞る。
「……八木さん、悔しいんですけど私ね、今頭の中……まだまだ坪井くんのことでいっぱいなんです」
「おー、そりゃな」
「だから、八木さんを使うとか……そんな、そんなこと絶対できません」
真衣香は、八木を押し返すようにして距離を取った。
「言うと思ったわ」
「……ごめんなさい」
「いや謝るなって、俺も今言うのどーよって思うしな。ま、とりあえず当分はこのままだ。 それくらいは許せよ、あの噂も相当胸糞悪りぃんだからな」
何でもないように言って、笑う。
優しい人に弱さを見せて、巻き込んで。
(八木さんの”好き”はきっと、違いますよ。 だって、優しいんだもん……捨て犬とか放っておけない人だと思うもん)
だからこそ、だ。
強くならなきゃいけない。そう思った。
自分の力で立ち上がって、歩き出して。
ひとりでも、あの腕を、あのキスを振り解けるように。
過去にしたい。
忘れてしまいたい。
そして、ちゃんと、嫌いになりたい。
次に恋をするならば、きっとその後じゃなきゃいけないと思うから。