いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「ひとりで帰りたいって、言うから帰したけど」
あの、ひどく取り乱した様子の真衣香を八木がひとりで帰すとはどういった状況なのか。
(聞いたところで、答えないな)
坪井は、そう結論付けて質問を変えた。
「……あいつと、その……ほんとに付き合ってんですか」
「どう思う?」
「どうって」
(まぁ、これも答えるはずないか)
タバコを捨て、壁にもたれて八木を見る。
八木はこちらを見ずに、また声を発した。
「気にすんの、そこじゃなくねぇか? あいつお前に泣かされたばっかだろ。俺に惚れてなくても付き合うかもじゃねぇか」
「はい?」
視線は坪井に向けられていないため、軽く睨みつけた表情は見えていないのだろう。けれど、声で乗ってきたと判断したのか。試すような口調に変化していく。
「俺が、あいつに惚れてんのかどうか注視しといたほうがいいぞ。 仮にそうだとしたらお前が害になるって判断してるうちは関わらせないからな」
「ははは……、厳しいっすね。 でも安心してくださいよ、これ以上嫌な思いさせたくないんで。 自重します、できる限りで」
「ふーん」と興味なさげに返事が返ってくるが。
「お前の自重なんてアテにならねぇけど」と、ここで視線がかち合う。
「ひとつ聞くぞ。 お前と咲山見てたからマジで疑問なんだよ。 マメコ相手なら捨てるにしても、もっとうまくできたはずだろ? あそこまで、とことん傷付けたのは理由あってのことか?」
冷たく、まるでその視線に切り裂かれそうな迫力を感じる。
即答できないのは、自分の中で行ったり来たりの形容し難い感情があるからだ。
「何なら、あそこまで惚れさせずに遊べたろ。 何がしたかったのかわからねぇから余計ムカつくんだわ、お前」
「……意識しないでいると、近づき過ぎてましたね」
「あ? 意識? 何を」