いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
天を仰ぎ、痛いくらいにまぶたを閉じて答える。
「俺は、立花を好きじゃないって意識するの時々忘れてたんで」
答えてすぐに、ガン!と、静かな部屋の中に音が響いた。
見ればそうやら八木がゴミ箱にスチール缶を投げ入れたらしい、結構激しく。
「さっぱり意味がわかんねぇわ、好きだって言ってたろ。 さっき」
「すいません。 本気で好きならないで……いられるつもりだったんですよ。 俺も、自分で自分のことがよくわかってないですね」
八木がまだ長さのあるタバコを灰皿に押しつけた。
そしてテーブルに置いていたライターをポケットに入れてからドアノブに触れた。
けれど八木は、ドアを開く前に坪井を振り返る。
「お前のことはどうでもいいけど、自分から言ったんだから守れよ」
「ああ、はい。 自重します、できる限りで関わりません」
「その、できる限りってのが気にくわねぇけど。 とりあえず今は落ち着かせてやってくれ」
そう言い残し、喫煙ルームを出て行った。
(……あいつに惚れてるかどうか注視しとけってさぁ)
そうするまでもなく、真衣香を大切に思っていることが溢れ出している。
「大切にか。 俺は、できたことないな」
軽く頭痛を覚えて頭に触れた。
久々に何本も吸ったせいだろう。
「好き、って言ったなぁ。 俺」
『大好きだ』と確かに、口にした。
思えば、その言葉を発したのはどれくらい振りになるのだろう。
ゆっくりと、記憶を辿る。