いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

「あいつら多分時期的に仕事多すぎてイライラしてるしさ、森野なんか週末ミスって小野原さんに怒られてたし完全八つ当たりだよ」

言いながら、顔だけ振り返ってた坪井の身体がきちんと真衣香へと向き直し、距離を詰めてくる。

そして、

グッと顎を持ち上げられた。
真衣香の心臓の動きが急激に早くなる。
まるで、ドラマのような。

(あ、顎クイとやらがリアルに存在するとは……!)

内心バクバクの真衣香が視線を定められていないあいだにも、気にせず坪井は話し続ける。

「でもさボランティアする必要ないし、見てて俺はすっげぇムカついたんだよね」
「え?」
「だから、これから見かけたら問答不要で助けに入るけどごめんな?」

こめんって? と聞き返した真衣香を見て坪井は満面の笑みを見せた。

「俺って口と顔いいからモテるし? 睨めれたらゴメン、全力で他の女かわしてね」
「え、そっちの方が険しいような??」

思わず声が上擦った真衣香を見て、坪井は笑った。 今度は堪え切れないと言った笑顔。

よく、こんなにも色んなバージョンの笑顔を持っているな……と、真衣香はいっそ感心してしまう。

「てゆーかさ、ずっとお前こんなふうに言われてきたの?」
「こんなふう?」
「総務にもいろんな人いるし、そりゃサボってる奴もいるけど。 お前違うじゃん」

真衣香への顎クイを終了させ、悔しそうに坪井は自分の髪をクシャクシャとかきむしった。

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