いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
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――昔から顔だけはよくて、中身なんか関係なく人は寄ってきた。その大半は女で、もう早いうちから”自信のある女”ってカテゴリには嫌気がさしていたように思う。
初めて、特別に見える子ができたのは中学にあがってすぐの頃だった。
隣のクラスの、女子だった。記憶は随分と朧げになったけれど、可愛らしくて目が離せなかったことは今でも覚えている。
委員会が一緒になって。
会話をするようになって。
メールするようになって。
やがて『坪井くんのこと好きなんだけど、つきあわない?』と、委員会の終わった2人きりの教室で言われた。
もっと2人きりで話していたくて。
でも、どうすれはいいのかわからなくて。
教師が去った後も何かと理由をつけて仕事を探して、必要のない時間を必要なものにして。
そんな、夕陽射す永遠のように長い一瞬。
『好きなんだけど』を、好きな女の子から伝えられる。
信じられないほど。
嬉しかったと思う、きっと当時は。
喜んでいたのだと、何となく記憶している。
『……え? え!? マジで? ヤバい、マジで?』
何度も確認したくて、聞き返した。
『うん……、好き』
記憶の中の笑顔はよく見えないけれど、その時の心は覚えてる。
可愛いと思ったことを、覚えてる。
舞い上がっていたはずだ。
『……お、俺も好きだよ!』
その証拠に、好きだと返した自分の声を坪井はよく覚えていた。