いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
基本的に笑顔の多い坪井。
そんな彼が力強く真剣な瞳で、真衣香を見つめる。
見つめられた場所が熱い。
そして、そんな坪井の瞳に自分がどう映っているのか。
どんな顔をしているか。
その顔を坪井はどう思って見るのか。
考え出すと、どうしようもなくなってしまい。
結果、勢いよく下を向き視線を合わせないようにするしか術がなかった。
「あからさまに避けないでよ、立花。 さすがに俺でも傷つくんだけど」
パッと手を離し、両手を挙げ数歩下がる坪井。
まるで降参しましたのポーズ。
「ち、違う、緊張して……」
慌てて引き止めるような声を出すと。
「はああ、マジで」と小さく呟きながら天を仰ぐような仕草で坪井は自身の目を手のひらで覆った。
「やめて。 朝からめちゃくちゃヤバい。お前の、そーゆう時の声と顔マジ可愛いから」
脱力したような、けれど責めるような声。
(何がヤバいの? てか可愛いってのは素で受け止めればいいの? 坪井くんにとって日常的な言葉なの?)
金曜日の夜から何度も繰り返す坪井の『可愛い』への反応。 その正解が真衣香にはわからない。
「この前本気でビビったんだからさ」と、更にボソボソ続く坪井の声。
手に邪魔されて表情こそ見えないが、それは、とても優しい声だ。
正解がわからない真衣香も、その優しさだけは聞き取れた。