いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「俺の車です。すみませんね、社内に戻ると営業部の仕事が立て込んでいるのでゆっくり説明ができそうになくて。食事を兼ねていかがでしょう?」
「しょ、食事……」
「ええ。それと、少し。個人的に話したいこともありまして。うちの坪井のことなんかを」

その名前が出て、真衣香の身体は硬直した。
すぐさま高柳が、固まる真衣香の背中を軽く押して助手席へと言葉は悪いが押し込んだ。

「あ、シートベルト忘れないで」
「……は、はい」

高柳がエンジンをかけながら真衣香に言った。
黒が基調の車内。夜なので、あまり視界は良くない。ドキドキと正面にあるディスプレイをひすらに眺めた。

(……え?え?あれ?顛末書の話で食事ってやっぱりおかしくないかな!?)

緊張もあり、言われるがまま車に乗り込んでしまった、その事実にようやく大きく焦りを感じ始める。

一方、やけに上機嫌な高柳。鼻歌まじりに何やら操作して音楽を流し始めた。
真衣香には全くわからないジャズ調の曲。

(お、オシャレだな……)



……なんて、呑気なことを考えて気を紛らわせた。
一体どこに連れて行かれて、何の説明をされるというのだろう?

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