いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

そう、現実だった。
あの夜の出来事、全部。 現実だった。

諸々を思い出して赤くなる真衣香。
それをマジマジと見つめる坪井は、大きく息を吐いてダメ出しした。

「てゆーか、それダメ、その顔。 もうすぐ他の奴らも出勤してくるのわかってる?」

囁く声が低い。
いつもはもっと明るい声なのに。
シーンごとのギャップに真衣香の心臓がついていけない。

(モテる人は声も使い分けれるの!?)

「え、えっと坪井くん? あの……」

焦った真衣香が坪井の名を呼ぶと。
ほんの一瞬驚いたように息を飲んだ、そんな音が聞こえて。

でも、次は、もう聴き慣れた陽気な声がした。

「だーかーら、さぁ? 会社であんまり可愛くすんなって話、しかも朝から」

けれど、そんな聴き慣れた声さえも。
耳に唇を寄せたまま話されると、どうしてだろう。

「つ、坪井く……、耳嫌だ」

息がかかるたびに、ぞくぞくと背中が震える。

「へえ、お前耳、弱いの? マジか、覚えとくね」
「何かやらしい言い方してる」
「え? そりゃ、会社じゃなかったら今猛烈に押し倒したい気分だし」

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