いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
坪井が答えると、高柳は「違う」と短く返事をした。
「なぜ、川口と、恐らく笹尾さんの問題にお前がここまで首を突っ込んでいるんだと聞いてる」
「あー、それは。立花巻き込まれたから。俺が個人的に腹立ってるだけで。特にそっち」
坪井は川口を指さしながら、足早に階段へ向かう。
「すぐ戻るんで」と、高柳に言い残して。
その坪井のあとを小野原が追って、引き止めた。
「坪井くん!私と森野さん、もう帰るから、立花さんも一緒に帰っていい?まだ、時間かかるでしょ、坪井くんは」
真衣香のことを心配してのことか。何にせよその提案は有難かった。心配しすぎなのかもしれないが、1人で帰らず小野原や森野と一緒の方が気も紛れるだろう。
「ああ、すいません、そうですね。助かります、2人がいるなら安心です」
「いや、立花さんに嫌な思いさせちゃったね、うちがまとまってないのが原因で」
肩を落としている姿。小野原ももちろん川口が輪を乱す存在であることは知っていただろうし、それを敢えて放置していたのだろうし。
坪井と同様に思うところがあるのかもしれない。
「泣いちゃってたよね、そりゃ、そうか。あんな目の前で怒鳴り散らされて」そう、呟いた小野原が、慌てたように顔を上げた。
「あ、引き止めてごめん!早く2人のとこ行って。私は森野さん呼んで更衣室にいるから、立花さんに待ってるって伝えてね」
「わかりました、ありがとうございます」
返事もそこそこに、坪井は急いで総務に向かった。急ぐ理由がある。
(笹尾さんなぁ……、あんまり関わってないけど、あれ多分)
真衣香におとなしく手を引かれていくだけの女ではないと思う。
……今日のことがなくとも、川口の横暴さは二課にとどまらず部内全体に知れ渡っていた。
おそらく八木よりも年上だったはずだが、まさかそんなこと、信じられないほどに自分本位な人間だ。
(いや、まぁ俺も人のこと言えないし。”自分本位”のベクトルがどこかってだけで)
はぁ、と。自分に嫌気がさしそうになりながら、思考を笹尾に戻した。
あれは、なかなかに、したたかな女だと思うからだ。