いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
咲山と入れ替わりで配属された営業事務は、笹尾が来るまでに2人辞めた。単純に半年でそれぞれ辞めていった。
考えるまでもなく、川口が原因だったのだろうと思う。
その後、新入社員として入社し配属された笹尾。そんな彼女が川口の愚痴がてら営業部の男に絡む姿を偶然、何度か見かけてしまったことがあったからだ。
男を味方につけて事務の仕事が減るのかと言えば何も変わらないだろうが、残業中にちやほや慰められるくらいには役に立つ。
それが、彼女なりの安定剤だったのかもしれないし、自分でそれを理解しているなら賢い部類なんじゃないかと認識していた。
さすが、咲山の後を引き継げるくらいには”仕事ができて””それなりに世渡り上手”だと。
それがいいか悪いかなんて、それぞれだし、そんなことはどうでもいい。
問題は”それなりに世渡り上手”な笹尾の、なんらかの矛先が真衣香に向いているということだ。
総務にたどり着き、ドアの前で足を止めた。
「あの、ば、バレバレだと思うんですけど、私坪井さんのこと好きなんです」
(…………は?)
盛大に入るタイミングを失ってしまう。
「が、頑張ってみても大丈夫でしょうか、好きって……その、伝えてみても、立花さんはもう坪井さんのこと何とも思ってないですか?」
(うーわ。え、マジか、えー、まさかの俺)
頭を抱えた。興味がなさすぎて、全く気がつかなかった。
(いや、てか、散々他の男とイチャついてたろ、しかも会社で。いつそーなったんだって)
モテるし、モテることは知ってるし、それについては散々利用してきた身として文句を言える立場にはないけれど。
真衣香という存在が現れてからは、どうにもその事実が邪魔だ。
そして、その後の、まさかの真衣香の発言に。
思わずバランスを崩しドアに頭をぶつけ、隠しようのない物音のせいで。己の存在を不本意ながら見つけられてしまうのだった。