いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました




***


「まず、ごめんね。川口さんの件はみんなぶっちゃけると面倒で。見て見ないふりしてた部分あるし」

応接室に入り、ソファに座るまでの間に坪井は早速話し始めた。特に引き伸ばして二人でいたい理由などないから。

「何より俺が、最近あの人が押し付けてくる仕事断るようになったからさ。そのしわ寄せが笹尾さんに向かってたのもあると思う。それは本当にごめん。部長も入れてちゃんと話そう」

意識して、精一杯優しい声で話す坪井に何を勘違いしたのか。
いや、やはりもとから勘違いしていたのだ。
笹尾は向かい合って座っていたソファから立ち上がり、坪井の隣に座り直した。
布越しに太ももが触れ合う距離で。

ベルトに近い部分に手を置かれ、いやこれ男がやったらセクハラなんだろ?なんて、ため息が出そうになる。

「優しいですね、坪井さん」
「は?」
「これからは、全部坪井さんに相談してもいいんですか? 川口さんが酷いこと言ってきたら」
「いや、全部って。川口さんのことは二課のみんなで解決しようって話だよ」

右腕に笹尾の指が、つぅっと這って。絡みつく。

「じゃあ個人的に助けて下さい」
「……ははは、なるほどね。じゃあ、ここから俺も個人的な話になるけど」
「はい」

絡む手に力が入った。期待に満ちた視線に、笹尾が何を考えているのかは、手にとるようにわかる。
わかるから、心底げんなりして息を吐いた。

「あいつに泣きついてた割には復活早いね、どっから演技?」
「川口さんのこと悩んで相談したのは本音ですよ。ムカムカして魔がさしたのも。でもあんまりにも人がいいから、この際色々協力してもらっちゃおうかなって」

身体が密着させられて、ふにふにとした胸の感触を腕に押し付けられる。ゆっくりと顔が近づいてきて。

「好きって言ったのも、本音です」

ねっとりと、まとわりつくような声で笹尾は言った。


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