いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
人間って、本当に色んな種類が存在してるものだ。殊更、真衣香を前にしていた直後だからか。汚らわしく感じる。
(まぁ、それ言っちゃうと、俺も汚れてる側なんだけど)
「ありがと」
そう答えると、厚みのある唇がニタリと嬉しそうな笑みを作った。
「……そういえば、咲山さんと立花さんて中身は全然違うけど、見た目はなんとなく共通点ありますよね?」
「は?」
「私も、あると思いません? 小さくて華奢で、黒目がちで。いかにも”可愛らしい女の子”好きですよね、坪井さん。だって小野原さんのことは眼中になかったみたいだし」
肩にするりと手が回って、いよいよ笹尾が本格的に抱きついてきた。
「噂どおり、咲山さんとも立花さんとも別れてるなら、私どうですか?」
(香水くさいって)
まだ香りがきつい。あんなふうに真衣香を困らせた後で、化粧直しをして香水をふって。
川口に怒鳴られて震えていた真衣香の肩が頭に浮かび、笹尾の密着する身体を見下ろして。それを交互に繰り返すと、沸々と明確な怒りが湧いてくる。
苛立ちを手に込めて、思い切り笹尾の身体を、引き離した。
「……坪井さん?」
「あのさ、人に聞かれない方がいいと思って入ったけど、これ以上ひっつくならフロア出て話そっか」
「え?」
「川口さんのことは悪いと思ってる、でもさ、あいつを巻き込んだことは許さない」
「巻き込んだって……」
笹尾が口籠もりながら、後ろに下がって坪井から距離を取った。
「川口さんは自業自得だよ、でも、立花は何の関係もない、何の落ち度もない。違う?」
「や、やだ。そんな怖い声出さないでくださいよぉ、坪井さんのキャラじゃないですってば」
「はは、何それ。笹尾さん俺の何知ってるっていうの?」
急に慌てた声に変化したけれど、それだって本当かどうかわからない。このまま下手に逃したら、きっとまた何かしら思いつくんだろうなと思う。これだけあからさまに真衣香の肩を持っているのだから、なおさら。
「どんな対応したら正解かなぁて、あいつの手前考えてたけど。笹尾さん、しぶとそうだしはっきり言ってよさそうだね」
「や、やだなぁ。しぶといって、そんなこと」
膝に体重をかけて、頬杖をつき、下から笹尾を睨みつけた。
「ふざけんなよ、お前」
笹尾が、横を向いてその視線から逃れようとするけれど。
「こっち、見ろって」
「な……!」
両頬を指で挟み込むように摘むと、怯えた瞳と視線が交わる。