いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「いやいやいや、んなわけ! ねえだろ! お前このまま誤魔化すつもりか? そうはいかねぇぞ、どんな子なのか教えてから帰れ! マジで! 気になって寝れん!」
「どんな子って夏美? 知ってんじゃん」
「あ? 舐めてんのか? お前の! 涼太くんの! 好きな女の子の情報ですよ、わかりますか、はい?」

いい加減、酔っていつもの5倍くらいになってる隼人のクソデカい声が鬱陶しくなってきた。しかし、そんな坪井の苛立ちなど気がついていようとなかろうと隼人には関係がないようで。

「せめて名前と素性! あとおっぱいのサイズと、芸能人に例えたらどの程度の美人かってのと」などなど、長ったらしく興味津々といった様子で隼人の質問が続く。

思った以上に執念を感じて、答えた方が早いなと判断した。
坪井は気怠く首をポキポキ鳴らしながら。

仕方なく、簡潔に答える。

「……立花真衣香、同じ会社で同期。美人っていうよりめちゃくちゃ可愛い。以上、気が済んだ? 他の奴にベラベラ喋るなよ」
「へー、真衣香ちゃんか!」
「はぁ? いきなり馴れ馴れしいだろ、立花さんって呼んで。いや、てか呼ばなくてもいいじゃん、会うことないでしょ」
「あ? いつか会うかもしんねーじゃん! つーかタメだろ? 俺は同僚でもねぇし、名前呼び普通じゃね?」

ふざけるなよ、俺だって名前で呼んだことないのに……とは、プライドが邪魔して言葉にはできなかった。
坪井が無言なのをいいことに、隼人の質問はまだまだ続く。

「美人ってより可愛いんだな、へーー意外だなぁ! んで? おっぱいデカいの? デカいに決まってるか! お前昔から大は小を兼ねるとか言って巨乳狙いだもんな」

隼人の言葉に、坪井は思わず真顔になった。

(……立花の、胸…………の、大きさ……)

聞かれても、真衣香の胸の大きさなど坪井にはわからない。

(むしろ知りたいのはこっちってゆう……)

あの夜、目にしていたはずの真衣香の下着姿だけれど。
己の次なる行動すら予測できないほどに、実はパニックに陥っていた坪井。
その為、記憶は靄がかかったように不鮮明だ。見下ろしていたはずの身体を思い出せやしない。

(結構辛いわけじゃん、今。下衆な話、いざ抜こうって時に思い出したかったりした訳だけど……)

それは、無理な話だった。
その日を、ひとつひとつ丁寧に思い返せば。最終的にはボロボロに傷つけ泣かせた声と涙がよみがえってしまうから。
< 340 / 493 >

この作品をシェア

pagetop