いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました



思い出してしまった泣き顔を振り払うように「教えるわけないだろ」と、重たい息を吐きながら答える。すると、坪井の返しなど元からわかっていたかのようにブハッと吹き出した後、声を上げて笑い出した。

そうして「ま、本命の下ネタは禁句だよな、わかるわかる。片想いが実ったら紹介しろよ」と。
背中をポンポン、まるで励ますように叩かれた。

しかしそれで終わらないのが隼人だ。

「涼太くんも、やっと恋する男の気持ちが理解できたんでちゅねー」だなんて、最後に余計な言葉を付け加えるから。
結局は頭を思い切り殴りつけることになってしまうのが、今回に限らずいつものオチだ。

このせいで、せっかく感謝していても素直に伝えきれない。

今回もそれを実感し、咄嗟に下を向いた。
思わず笑みを作ってしまった……その顔を隼人から隠す為だ。

先程の女をハメろ発言も、今の言葉も。どちらにせよ隼人は元気のない坪井を励まそうとしてくれていたのだろう。

「片想いが実ったらって。それ、奇跡でも起こんなきゃ無理だけどね」と力なく肩をすくめながら言って、坪井はポケットからコインロッカーの鍵を取り出した。

「んじゃ、今度こそ行くな。他の奴らによろしく」

短く言い残して、入り口近くのコインロッカーに向かった。コートやら鞄やらを取り出して身につける。


――外に出ると、冬の空気の中ゆらゆら、どこもかしこもクリスマスらしい鮮やかなネオンが輝く。
見渡しながらブルっと震えた身体。
刺すような冷たさに、酔いと熱気で熱くなっていた身体も急激に体温を下げたような気がした。

「さ、帰ろっかなー」

誰に言うでもなく、1人呟いて見上げた夜空は、煌びやかな街灯りのせいで星がまばらだ。

星あかりが恋しい、こんな夜空を。彼女は誰と見たんだろうか。
そんなことを、ふと考えて。またチクリと胸が痛んだ。

「また自滅……考えるまでもなく八木さんじゃん。いいなぁ、クリスマスに立花と一緒とか羨ましすぎるだろ……」

本音をポロリと呟いて、息を吐き出す。当たり前だけど白くて変化して、力なく彷徨うそれをじっと眺めた。
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