いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「い、いえ……多分何も……問題ないで、す……」
あまりにも当たり前のように言われたので、照れたり恥ずかしいの前に呆気に取られた声が出てしまった。
そんなものだから「ほんとにわかってんのかよ」と更に八木から溜め息まじりの声を出させる結果になってしまう。
少しの、なんとも言えない気まずい沈黙の後。真衣香の方に向き直した八木。
顔を覗き込むようにして近づき言った。
「行く? 行きたくない? どっち」
頬杖をつきながら見上げられると、逃げ場なく追い込まれたような気になって緊張が増す。思わず引き気味になった真衣香の身体に、八木の腕がそれを阻止するようにして触れる。
(わ、わわ! 恥ずかしい!)
腰に回された八木の長い腕はウエストを掴むようにしてるものだから、お腹にもガッツリ触れている。
更には八木の両脚が真衣香の脚を挟み込むようにして固定しているので、できることといえば目を瞑ることくらいか。
もちろん真衣香はキツく目を閉じた。
「…………っ、あの、ち、近い……」
「目ぇ閉じるなよ。 俺のこと見て答えろ」
(ひぃ……! 今日の八木さん何か変!)
目元を優しく撫でられたかと思ったら、手の感触が消えた後、熱く何かが触れた。
それと同時に、チュッ、と。効果音が聞こえてしまったので真衣香の体温は急上昇だ。
「な、なな、何で……!」
「何でってこっち見ねぇから」
驚いて目を開けた真衣香を、意地悪く笑う八木の瞳が愉快そうに眺めてる。
「いい、い、行きたくないわけは、ないんですけど……、でも」
「でも、何」
やはり、何やらいつもと様子が違う八木に対し、動揺する真衣香。
しかし、動揺しながらも即答できないのには理由がある。
まず、真衣香には八木の気持ちに何も返せるものがないこと。同情からの気の迷いだったとしても、真っ直ぐに気持ちを伝えてくれた相手に中途半端な思いを返すことなどしたくなかった。
何より坪井とのことがあって理解した。あの合コンの夜”彼氏が欲しかった”真衣香は坪井の言葉が嬉しくて、舞い上がり、深く考えず即答した。
思えばそれがそもそもの間違いで、真衣香が男性に対して耐性がなく、また経験に乏しかった為にあの言葉を信じ込んでしまったのだとしても。
きちんと好きな人と付き合おうと。そんな信念さえ持っていれば防げたことだったのだ。
反省する点が大いにある。