いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「坪井くんがひとりで考えて怖くなる必要ないじゃない! 私は坪井くんが傷つけちゃった彼女さんじゃないし、好きになったその先を一緒に作って見つけられるんだよ」
「た、立花……」

坪井が心配そうに真衣香の名前を読んでいるけれど。

「だって、今一緒にいるんだから……。こ、これからも一緒にいたくて、私坪井くんに会いにきたんだから」

その声に応えることよりも、頭の中に次から次へと浮かんでくる言葉を声にする方が先だと感じたから……止めなかった。

「私は、坪井くんにひどいこと言われて振られても嫌いになれなかったし、今もそう! 何聞いたって知ったって嫌いになんてなれないの」

でも、その言葉たちはめちゃくちゃで、自分でも何を言っているのか把握できない。

「坪井くんならいいよって、思ったの。傷つけられてもいいんだって。坪井くんが女の人に何を求めててもいいの」

できないのだけれど、伝わって欲しいと願ってる。

「でも、お願い……求めるのも傷つけるのもその相手は全部私がいい」

ほんの数秒の、けれど、とてつもなく長く感じた沈黙のあと。

息を切らす真衣香と。
そんな真衣香を強く抱き返した坪井。

(……あ)

坪井の力強い腕に囲われてしまい……真衣香は自分から無理やり抱きついたにも関わらず全く身動きが取れなくなってしまっていた。
そうなって初めて、坪井の顔に胸を押し付けている体勢であることにも気がつき、恐ろしいほどの羞恥心が襲ってきたのだ。

しかし真衣香の力などまるで及ばず、どれだけ力を込めようと腕の自由が効くだけで。
そのため、どれだけ坪井の表情を確認したくとも、それが叶わない。

「つ、坪井くん……? ごめん、私変なこと言ってるってわかってるんだけど、でも」

顔を寄せてなんとか顔を見ようとするけれど。
ささっと反対を向かれてしまう。

(え、ど、どうしよう……変なこと言ったんだ)

怯みたいが、まさかここにきて怯めない真衣香は、必死に呼びかける。

「よ、避けないで……ほしい」
「違う、避けてない」
「じゃあ顔見せて欲しい」
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