いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
本格的に顔を合わせてもらえない。
真衣香が顔を逸らした坪井のほうに再度近づこうと首を動かすと。
「待って! ……ごめん、今ちょっと……待って、ごめん」と、弱々しいながらも焦る声が真衣香の耳に届いた。
「坪井くん……?」
「ちょっと、今ヤバい。カッコ悪い」
――真衣香は、よく泣く方だと自分で認識している。だから涙を押し殺すような、そんな声には否応なく気がついてしまうのだ。
「……な、泣いたって、いいと思う!」
「い、嫌だよ」
「嫌でも泣かなきゃ、泣きたい気持ちになった時の色々なこと流れていってくれないんだから」
ぎゅっと、坪井の腕にさらに力が込められたのがわかった。今何を思っているのか、知りたいと真衣香は強く思う。
「悲しいことがあったり、悔しかったり怒ってたり、坪井くんは隠すの上手だから私見つけられない時もあるかもしれないけど、でも」
そんな真衣香の声を聞き終わるよりも前に、坪井の声が響く。時々詰まって、懸命に涙を堪える息遣いが真衣香の心に重く響いて。
「泣いて、喚いてさぁ、でもどうにもなんないじゃん。だったら気付いてなきゃ済む話で、何でもない顔してたらそれがほんとみたいになるんだって、いつも」
「……うん」
「俺、自分にも他人にも嘘ばっかりだ」
吐き捨てるように言った。そのとおり、自分への軽蔑や嫌悪でいっぱいの言葉。
(いいことも悪いことも重なる時は重なるって言うけど……でも、でもこんな)
ずっと1人きりで自分とだけ対話して、肩肘張って、歩く。その為に押し殺して犠牲にしてきたものって何だろう。
明確な答えを今の真衣香に出すことはできない。ならばせめて。
「……じゃあ、嘘、つかせてあげない。坪井くんの嘘、全部見つけるから。だから大丈夫」
大丈夫、を繰り返す以外に言葉をうまく見つけられないけれど。