いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「一緒にいたら、新しく知れる坪井くんってどんな人かなぁって。早く会いたい」
ぽつりと零した、その言葉の後。
爪を立てられてでもいるのだろうか。そう感じるほどに、酷く背中が痛んで。
けれどそんな痛みもすぐに吹き飛んでしまった。
静かな室内に響く真衣香の息遣いと――嗚咽混じり、小さな啜り泣く声。
真衣香も、触れている坪井の髪に指を絡ませ、きつくきつく掻き抱く。
「どうしたらいいかわからなかったんだ……」
「うん」
胸元に、更にきつく押し付けられる頬の感触。
「誰かを、ま、守る余裕なんてないよ、俺だって怖かったんだよ、大丈夫だって言って欲しかった」
「うん」
「怖かった……俺のこと責めるみたいに見て、血が見えて」
「うん……」
「話したくて、病院行っても母さんもう起きがれないから、それ見たらもっと……怖、くなって……っ」
"怖かった"と、掠れた声が涙と一緒に溢れてく。胸元が涙で濡れていく感覚が、どうしようもなく愛おしい。
どうしようもなく、守ってあげたい。
そんなふうに大好きなひと。
こんな感情があるのかと、熱くなり続ける心臓に語りかけた。
きっといろんなものが恐ろしかったんだろう。涙とともに吐き出したなら、どうか。
(坪井くんが新しい自分と出会えますように)
その願いは傷ついている人が確かにいたのなら、綺麗事だと言われるんだろう。けれど真衣香はそう願わずにはいられなかった。
誰かを特別に思うことは、その人以外を決して特別には考えられないのだから。
恋や愛なんて、酷く残酷で、だからこそ人を魅了し続けるんだろう。
諸刃のような感情だ。