いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
新人研修……と、真衣香は心の中で復唱する。そして「そんな、まさか」と思ったままを口にした。
「喋ってもなかった……よね? 私たちって」
「はは、マジか。ひどいなぁ。二人きりになりたくて誘ったけど、即断られたし」
「……え、誰が」
「俺が、お前にね」
記憶がない真衣香は頭の中で何度も二年以上前の事を思い返そうとするけれど、全く記憶にない。真衣香に話しかけてくれた坪井のことを思い出せない。
唯一可能性があるとするならば。
「初日……も、もしかしたら……資料に書き込むの間に合ってなくて、あ、焦ってた時かな」
それしか思いつかない、と。恐る恐る言ってみると。
「あー、そうかもね、人事の人のとこ走って質問かな。行ってたし」
と、クスクスと笑いながら坪井はそう答えた。特に怒ってはなさそうでほっと胸を撫で下ろしていると。坪井は未だ着込んだままだった真衣香のコートを肩からずらし、脱がせていく。
「……そんな、焦ってるにも程があるよね、失礼なことしててごめんなさい」
「ううん、そーゆう話じゃなくてさ。当時は、俺女誘って断られたこともなかったし衝撃だったんだけど……」
コートを脱がせ終わりソファの背もたれに掛けた後。
真衣香のニットに手を滑り込ませて肌に触れつつ坪井は、優しい声を返してきた。
「今考えると、焦って周り見えてなかったんだろうなぁて、考えたら可愛くてさ」
「可愛くは……ないと、思う」
「可愛いよ、あの頃からずっとお前のことが可愛かったんだよな俺は」
キッパリと言い切った後、再び唇が触れ合う。しかし今度は触れ合うだけではない。真衣香の小さな唇の隙間をこじ開け、坪井の熱い舌が口内を奥へと進む。
「ん……」
その舌に探るようにむさぼられ、真衣香の身体には甘い電流が流れたかのように。背筋に強烈な快感が刺さるように落ちた。