いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「そろそろ顔見せて」と、言いながら。
数分だろうか?潜っていた真衣香から強制的に布団を剥ぎ取り、抱き寄せた。

「あのさ、言っとくけど慣れてないよ」
「……何が?」

腕の中におさまる真衣香から疑いの声が聞こえる。
仕方ない。このへんの認識はこれから擦り合わせていかなければ。

「こんな気分の朝って、俺、初めてだから」
「……え?」

もぞもぞと動いた真衣香が、密着する身体の隙間から坪井をじっと見上げる。

「そりゃ初めて女を抱いたなんて……まさか言わないけど。こうやって誰かの寝顔、見てたの初めてだし」
「え」
「起きたら何話そうかなって、緊張したのも初めて」

相手が起きるまでの時間を、大切に噛み締めたことも、もちろん初めてだ。

あまりにもしみじみ話したからだろうか。真衣香は不思議そうに首を傾げた。

(うん……その顔も可愛い、そんでもって昨日も)

「……可愛かったな、ほんと、昨日」
「な、ななな、何が!?」
「聞きたい?」

わざと意地悪な声を出したなら。

「やめときます……」と口を尖らせて真っ赤になる様子は抱き潰してしまいたいほどに、やはり可愛かった。

「あのさ」
「な、今度は、何?」

次は何を言われるのか、と。緊張した様子で坪井の声に反応を返した真衣香。
しかし今度は、からかうつもりなどなかった。

「聞いてくれて、ありがとな。昨日」

一層深く抱きしめて、真衣香の髪に顔を埋めた。
だから表情は見えないけれど。

「……ううん」

何を? とは言わない、優しい声がする。

「全部好きにって欲しいなんて思わないんだ、でもお前がいてくれたらさ。俺は、俺をこれ以上嫌いにならなくて済むような気がしてる」
「うん」

静かに、けれど確かに頷いた真衣香。
柔らかくて、暖かかくて。まるでこの世の全ての幸せがこの中に集まっているような気さえしてくるのだ。

「まぁ、困ったことにさー、俺はお前の全部大好きだけどね」
「そ、そそ、そんな……全部なんて」
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