いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「なんか、今日いきなり寒くなったね」
「なー、やっとだよ。スーツって暑いから待ってました!って感じ」
そっかぁ、と。頷いてると握られっぱなしだった手に力が込められ「立花!走れる!?」と、坪井の声。
頷く前にまた声がする。
「俺の上着着てなよ!って言いたいけどコート会社に忘れてきちゃったから、とりあえず飲み直せるところ入ろ」
「え、ええ!?ほ、ほんとに飲むの?2人で??」
「……何だよ、嫌?」
聞き返すと、拗ねたように坪井が振り返った。
その顔を見ると、まさか嫌とは言えるわけもなく。
真衣香はブンブンと首を横に振り、坪井の力強さに引かれながら進んだ。
少し歩いた先で、こじんまりとしたバーに入る。
洋楽のBGMがかすかに流れる店内にはカウンター席の他に2人掛けの丸いテーブル席がいくつかあった。
迷うことなくカウンター席を選び、座った坪井は慣れた様子で「とりあえず何でもいいや」と、店員に伝えた。
「立花は?ここ、なんでもって言ったらマティーニとか定番くるけど、お前ならロングのがいいか?」
「ま、まてぃ?」
「……甘い有名どころだといける?」
「え?な、なんだろ、カシスオレンジとかそうゆう?」
「ああ、そうそう。 んじゃそれな、マスター」
慣れた様子で、こんな小洒落たバーでくつろげてしまう坪井に真衣香は少し引け目を感じて俯いてしまう。