いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
その後、坪井が真衣香の部屋に到着したのは小一時間経った頃だった。
インターホンが鳴って、真衣香はろくに確認もせず玄関のドアを開けた。
目の前には坪井の姿。
「坪井くん、お疲れさま……!」
勢いに、目をまん丸にさせた坪井は真衣香を暫し見下ろした後、コツンと後頭部を拳で軽く攻撃した。
「危ないってば」
「え?」
「いや前に来た時も思ったけど、一階だし、お前はこうやってすぐドア開けちゃうし」
言いながら小突いた真衣香の頭を撫でて「心配なんだけど」と、ブスッとしたしかめ面の後、力なく笑顔を作った。
「ま、今日はとりあえず、いいや。急に来てごめんね」
「……ううん、入って」
真衣香の住んでいる1Kのマンションは、オートロック、一階のベランダには電動のシャッターが付いている。TVモニター付インターホンやエントランスには防犯カメラもある。などなど、一人暮らしをすることに反対をしていた父を、おとなしくさせるために母と一生懸命選んだ築浅の賃貸マンションだ。
しかし内容の割には家賃が安かったマンション。
それもそのはず。管理が割とずさんなので、年末に故障したオートロックの修理がなかなか来ない。
坪井はそのことを心配しているのだろうか。
緊張していたくせに、ドキドキと胸が躍ってすぐに舞い上がってしまいそうになる。
好きな人に心配されるって、こんなにも幸せなことだなんて。
いつだったか、帰り道を心配された時も同じように嬉しくなったなぁと呑気に思い返しながら。
坪井が靴を脱ぎ、歩き出した後ろを着いていく。
玄関を入ってすぐに右を向き、キッチンやクローゼットを通り過ぎて歩けば8畳の洋室にたどり着く。ベッド、小さなソファー、テレビがぎゅっと配置されている部屋だ。
その部屋に優里や両親以外が立ち入ることなどこれまではまずなくて。
未だ自分の家にいる坪井を見ると、胸のあたりがくすぐったくなってしまう。