いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
身体が触れ合う距離まで密着したが、ドキドキする余裕すらない。
「あの子、お前の友達でもあるし……俺の、中学の頃の同級生の親戚でもあって」
「し、親戚?」
聞き返した真衣香の目をじっと見つめながら、坪井はゆっくり頷いた。
「青木芹那っていうの、イトコなんだって優里ちゃんの」
「……あ」
その名前を真衣香は聞いたことがあった。
優里と同じ歳で、友達のようによく遊ぶのだと言っていた。
真衣香は、何かが重なろうとしていることに気がつき、恐怖を覚えた。
「わ、私が優里と仲良くなった頃……優里のイトコは学校に、少し……行けなくなったって、聞いて」
「そっか」
「優里にも、その子と同じような時期があって、だから、凄く心配してるってよく話して……」
呆然と真衣香はそれを声にし続けた。
もしかして、もしかして。と脳内で警鐘が響く。
『俺さ、好きな子がいたんだ』
『要はいじめだよね』
クリスマスの夜、ぽつり、ぽつりと。坪井が語った内容が真衣香の頭の中で再生されては、積み重なっていく。
『逃げた』
『守らなかった』
坪井の心の中の多くを占める、特別な人。
(どうして、まさか、こんな……こんなに近くにいたなんて)
話に聞く"過去の人"という、ぼんやりした存在ではなくなってしまう。
優里のイトコ。同い年の、仲良しの、優里に似て美人で可愛くて。
写真でしか見たことはないけれど、それは、身近に存在する確かな存在。
こんなにも重みが違うものなのか。
(どうして……)
「せ、芹那ちゃんが……坪井くんの、好きな人なの……?」
無意識に、声になっていた。その瞬間、坪井は掴んだままだった真衣香の手をさらにきつく握りしめた。痛いくらいに。
「違う、俺が好きなのはお前だよ」
「……あ」
「青木は、確かにこの間お前に話した、俺が……昔好きだった女だけど、もうそんな感情は持ってない。絶対」
わかっている。そんなことは真衣香にだってわかっている。
なのに、どうしてこんなに心がざわつくのだろう。