いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
払い除けられた勢いで、そのまま深くイスにもたれかかって芹那を見据えた。口元だけに、歪に笑みを浮かべ小首を傾げて。
「俺ら、会おうと思えばいつでも会えたじゃん? 智里と繋がってんだろ? 今も。だったら隼人からいくらでも俺の情報なんて入っただろうし」
智里の名前を出すと同時、隼人の顔も浮かんでしまい少し胸にくるものがあった。15の頃から去年まで、隼人が付き合っていた女で。高校に入ってから智里と芹那はバイト先で再開し仲良くなったらしい……と隼人から聞かされたときの衝撃は忘れない。
『会えるように段取りしようか』と提案してきた隼人と智里を『やめてくれ』と一蹴したことを坪井は今もよく覚えていた。
「……そうだね」
観念したような、それでいて急激に冷めたような。そんな声で小さく答えた芹那。
(俺は拒否ってたけど、こいつは智里から聞いてたって言うんなら予想通りだな)
坪井は心の中でひとり納得し、会話を続ける。
「それで言うと俺も同じ条件な訳だけど。まあ、俺は知りたくなかったし、隼人も、敢えて伝えることはしてこなかったから」
坪井の声をおとなしく聞きながら芹那は食べかけのうどんを横に押しやって、忌々しげに舌打ちし、頬杖をついた。
「今何しても智里からそっちに話流れないと思ったのになぁ」
「あの二人が別れたから?」
芹那は当たり前でしょ、と言った様子で頷く。
「まあ、そーなるよなぁ。でも俺は性格悪いし立花のことになると見境なくなる自覚あるからさ、智里と連絡取らせたんだよね。今更会いたいとかどう考えてもおかしいから」
「……うわ」
「鬼じゃん」と零した、その言葉は本音だろう。
眉根を寄せる芹那に坪井は言った。
「今のとこ、自分の親友の傷抉ってまで手に入れた情報が、二つあるんだよね」
ニッと特に楽しくもないが口元の筋力だけで口角を上げて、ピースサインを芹那に見せる。「何?」と睨み返してくる彼女からは既に甘さのかけらもなかった。
だけどもう逃げ出したりはしない。