いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「ひとつ、男と別れた原因は浮気だってね、お前の」
「……で?」
芹那は、それが、今この場に何の関係があるのかと。そんなことを言いたげな、非難するような瞳で坪井を見た。
「智里の言い方だと、男とっかえひっかえだったお前がようやく落ち着いてくれたと思ったら、逃げるように別れたってさ」
「はぁ……何それ。大げさなのよ、智里。そもそも逃げてないし」
「他の男と関係持ってても、お前と別れたくないって相手の男は言ってるんだって? すげぇな、俺なら無理」
吐き捨てるように言うと、芹那は意外にも肯定的に「私もそれは同感だわ」と、坪井を睨みつけていた目を伏せて、寂しそうに呟く。
そんな芹那を視界に捉えながら、坪井は話を進めていく。
「で、これは俺の単なる想像だけどさ。ちょうど同じ頃に優里ちゃんから俺と立花の話、聞かされたはずなんだけど」
「……だったら何?」
頬杖をついたまま、視線を合わせず横を見る芹那。違うと言わないあたり、おおよそ間違ってはいないということか。
「それが、何か癪に触ったかなって」
「……何それ? 自惚れないでほしいなぁ」
不機嫌な声で、けれど冷静さを失いたくない現れだろうか。やんわりと言い放つ。それに対し坪井はククッと喉で笑った。
「いや、違うよ。ごめん、これもただの想像な。青木、今まで俺が女とどんな付き合いしてたか知ってたんだよな? 智里にでも聞いて」
「…………」
これまでどれだけ変化しようとも必ず返ってきていた声が返ってこない。坪井はそれを肯定と捉え、少し強張っていた身体から小さな深呼吸と共に力を抜いた。
「立花は、俺とのことを親友である優里ちゃんに事細かく話してたと思うよ。それを聞いたお前は気に食わなかったはずだ」
相変わらず何も声を発しない芹那を前に、坪井は困ったように眉を下げ、乾いた唇を舐めた。そうしてゆっくり足を組み替えながら言葉を選ぶ。
誰だって心の奥に触れられることは不快なはずだ。