いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「あ、当たり前じゃん……あんな終わり方、き、気になるじゃん。知ってる子がいるなら聞こうと思うじゃん」
言い切られて、坪井は情けなく眉を下げて曖昧な笑顔を作るしかできなかった。
一切見たくなかった自分との違いを言葉にして見つけることができそうにないからで。
「どうして真衣香ちゃんは特別だったの? なんで坪井くんは変われたの? わ、私はどうしていつまでも一緒なの!?」
「一緒って?」
探してた。真衣香のように上手くはできないだろうけれど。
そう思いながら。
(しかも、目の前で一度見捨てた人間相手に)
それでも探してた、誰かの心に入り込む方法を、タイミングを。
互いの中の存在が、縛り付けるものでなくなるようにと。
「私は坪井くんに酷いことした自覚があるの! お母さんのことで大変だった時期にあんなバカみたいな揉め事に巻き込んで、あんな……顔させて」
「あんな顔?」
真っ赤な顔が一転青ざめていく。チクリと胸が痛んだ。
(そりゃ、なぁ。俺の中に手首から血垂らしてる青木がいつまでもいるように、青木にだって残ってるもの……あるよな、当たり前だ)
思わず目を閉じてしまいたい衝動に駆られる。しかし、もう繰り返したくなくて今ここにいるのだから。
芹那の言葉から逃げ出したりしないよう、胸の痛みをしっかりと受け止め、目の前の女を見つめた。
「いつも笑ってた坪井くんが……あ、あんな真っ白な顔して、震えて固まって、そんな人に……家族の死と隣り合わせの人に、血なんか見せてあんたのせいだって見せつけるみたいに」
ポロポロと涙が芹那の瞳から零れ落ちていく。本当は10年前に拭っていなければいけなかった涙だ。
「誰かを好きになるたびに思い出すんだよ、そのときの表情。罪悪感でいっぱいになって動けなくなるの」
「そっか」
「だから、助けてもらえなかったかわいそうな私を、か、形にしていたくなるのいつもいつも……! 私は悪くないんだよって、悪いのは坪井くんなんだからって!」
涙混じりに叫ぶ声。
広場で遊ぶ家族連れの視線が集まった。コソコソと耳打つ人間を何となく眺めながら思った。
(ああ、そっか……俺は俺の事情で青木を巻き込んで傷つけて、だから)
「……自分のペースで逃げて来れたけど、お前は、俺の様子を探ってなきゃ矛先もわかんないよな」
力ない声で呟くと、乱れた呼吸を隠さない芹那が、何を言ってるんだ?と訴えるような目で坪井を見つめた。