いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「で、毎回そーなったら適当に男引っかけて浮気して別れて。でも今回は違ったの?」

 肩で息をしながらも、芹那はゆっくりと頷いた。

「……バレて、怒ったけど……でも、坪井くんのこと話して、そ、そしたら何も知らなくてごめんって。謝るし……これからはさせないように、自分が頑張るとか言うの」
「俺の話は、その男以外にしたことある?

 きつく掴んでいた芹那の手首を離して、坪井は足を組み頬杖をつきながら芹那を横目で見た。
 ふるふると首を横に振る様子が見える。
 
「初めて、話した……そしたら結婚する意思も変わらないって言うの、おかしくない?」

 おかしいと思うよな、と。ひっそりと心の中で呟いた坪井の脳裏にいるのは、もちろん真衣香の姿だ。
 
「俺もさ。青木のことを話したのは立花が初めてなんだよ」

 バッグから取り出したハンカチで涙を拭いながら、芹那は目を見開いた。

「……綺麗だったり強かったり、目の前にそんな相手いたら眩しくて嫌になる時もあるけどさ。結局離れられないから、ちゃんと向き合って話してきた方がいいよ」
「え?」

 パチパチと瞬く瞳からまた涙が落ちる。

「俺も相当、立花のこと傷つけたけど。でも、あいつ結局俺のとこに来て全部知りたいって言った」

 不思議そうな顔をしながらも、おとなしく耳を傾ける姿。
 歪んだ笑顔でもない、嘘くさい綺麗な笑顔でもない。記憶の中にいるあの頃の芹那を垣間見ているようで少しだけホッとする。
 そして、ホッとする自分に問いかけたくなる。
 訳のわからない男のところに飛び込んできてくれた真衣香の恐怖や不安はどれほどのものだったのだろうか?

 やはり、また少し胸が痛んだ。



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