いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「青木さぁ。やらかしすぎたら、背負う荷物多くなるよ。そーゆーのメンタルやばい時にすっげぇ実感するからさ、なるべく身軽でいなよ」
「それは……ご親切に……」
弱々しい声で答えた、その手を今度は優しく掴む。
「……ま、あいつに手出そうとしたこと除けば、俺はお前に頭上がんないし、一応幸せになってほしいとは思ってる」
「それはちょっと、優しすぎるんじゃない?」
受け流す雰囲気で芹那は軽く笑ってみせた。
けれども、違う。優しいんじゃない。
「違うよ、全然。終わらせたいだけ」
「は?」
「過去は変えられないけど、切り捨てられるよね。お互いに」
「え?」
再び何やら作為を感じ取ったのだろうか。
口元をひくつかせ、構えるように距離を取ろうとする。
「会社の上司なんだって? 相手」
芹那は、口を結んだまま何も答えず、怯えた様子で坪井に強い視線を向けた。
「とりあえず直属の上司に退職願も退職届も出すじゃん? その相手がお前の男でしょ?」
「……う、うん」
「ちなみにお前、今会社休んでるの辞める前の有休消化と思ってるかもしれないけど、違うからね」
「え?」
もともとくっきりとした目を更に見開く芹那。
「いや、引き継ぎもちゃんとしてないらしいじゃん、無理でしょ普通に考えて」
なんでそこまで知ってるんだ?と怪しむ視線を受けながら、坪井は飄々とした様子で続ける。
「よくある話だけど、お前が書いた退職願いってその人のとこで止まってるらしいし、お前上司に教えられるまんまに書いたんだろ?」
「うん。何月何日で退職したくお願いします的な……」
「退職願いは会社側が承諾するまでだったら撤回できるよ、お前の意思で。まだお願い中なだけじゃん」
うん? と首をかしげる様子に「ちゃんと自分で調べて書きなよ」と呆れた声で返した。
「ま、とりあえず有給2週間の間にお前を説得して連れ戻すつもりだったらしいし、ちょうどいいだろ」
「何が!?」
「職も彼氏も失わないじゃん。てか、お前の彼氏俺の上司に似てるんだよね見た目。マジで疲れた」
「頼んでないからね!?」