いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
芹那を無視して話し続ける坪井を前に、彼女は肩を落とし両手で顔を覆う。
「あ、ちなみに二人で話した結果までは責任持てないけど。この辺に来てくださいねって連絡はしてるから」
その言葉を聞いた芹那は、俯いたままの状態で声を張り上げる。
「ちょ、ちょっとやめてよ!」
「飲んでホテル泊まって、酒抜けた頃に帰るってプランは自分の男とよろしくやっててよ」
俯いてる場合ではなくなったのか、次はもの凄い勢いで顔を上げて。
「こっちにも心の準備とかあるんだけど!?」なんて、怒りながら叫ぶ姿は、思い出の中の影と少し重なった気がした。
「ってことで、青木。彼氏と会う前にちゃんと終わらそうよ」
「ちゃ、ちゃんと……って、これ以上何?」
探るような眼差し。
坪井は芹那の目を見てゆっくりと声にする。
「ずっと残ってるのってさ、ちゃんとお互いの目見て終わらせてないからだ」
「……あー、そうゆうね。そうかもね」
少しホッとしたように息を吐いて、芹那は軽く頷く。
「傷つけた、傷つけられたなんて世の中山ほどあるし、まぁだからって俺は自分のしたこと自体は許されるもんでもないと思ってるけど、でも」
一旦区切って、振り絞るようにして出した声が意外と穏やかなものだった。
「ちゃんとお互いにあの時の気持ち話すことで終わりにしたいなって俺は思ったんだよ、勝手にごめんな」
「……嫌になるね。私は自分の中のどうしようもない衝動をさ、消化させるだけで精一杯だったっていうのにね」
自らを蔑むように芹那の口から放たれた声。
その気持ちが痛いほどわかる。
坪井だってそうだからだ。今も、真衣香を前にすれば自分などいくら軽蔑しても足りない。
その心を結局はひとつずつ壊して、越えていくしかない。
この瞬間がそのうちの大きなひとつに、なってほしいと願う。
「あの頃さ、お前に何もしてやれなくてごめん。自分のことで精一杯で」
坪井の言葉を静かに見守った後で「なるほどね、そういう感じでいくのね」と、芹那は笑った。