いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「どうして、勝手に決めるの?」
気がつけば、そう、声にしていた。
「勝手に?」
「そうだよ、いつもそう、結局は自分の思ったように物事が進まなきゃ気が済まないんじゃない坪井くんは!」
声を荒げた真衣香を前にして「それは……」と、らしくなく次の言葉が続かない。
しかし坪井を責めるような言い方を真衣香はすぐに後悔した。
「違う……嘘、ごめんなさい」
だって、真衣香の行動が違えば、言ってくれたかもしれない。
一緒に決めさせてくれたかもしれないのに。
「え? いや、何で……お前が謝ることなんて何もないよ」
大げさに首を横に振って真衣香の言葉を否定した坪井に、真衣香もまた否定を重ねた。
「違うの」と、キッパリ言って坪井の胸元に顔を埋める。
「怖かったの」
確かに、坪井は人の感情を大きく揺らし、そこでうまれた隙間に切り込むようにして人を捕らえる。
彼がそんなふうに人の心を試す人だと知って、それでも。例え傷ついても傷つけられても傍にいるのだと意気込んで、選んだんじゃないのか?
隣にいることを。
(ここに来る前に、ちゃんと答え出してきたじゃない……なんですぐ逃げようとするの)
「わ、私いい子ぶろうとして、芹那ちゃんの気持ちに気を使うようなふりして、でもホントはずっと怖かっただけなの!」
「……怖い?」
坪井が恐る恐るといった様子で真衣香の言葉を繰り返す。
「うん」と短く相槌を打ち、真衣香もまた、恐る恐る心の内側を声にしていく。