いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
バカらしい。と鼻で笑い、真衣香を睨みつける綺麗な二重の瞳。
思わず見とれてしまいそうなアーモンド型の整った目。薄いブラウンのアイシャドウに細いアイライン。抜け感たっぷりのメイクなのにハッキリとした顔立ち。同性から見ても美人だと思う。
この人が、つかみ所のない彼を形成するに至った、一番大きな存在。見たくない気持ちを抑えて、しっかりと彼女を見据えた。
「芹那ちゃんが傷つけたかった私は、隼人くんが来てくれて……だから男の人たちに何もされてないし。坪井くんはまだ芹那ちゃんのものじゃない。優里とだって仲直りするから」
「だから何? 失敗したねって笑いたいなら勝手にしなよ」
とことん真衣香の言葉を受け入れたくないのか。頑なな態度に、つい声を荒げてしまう。
「そうじゃないよ! これまでの芹那ちゃんのことは知らないけど! 少なくとも今日は、まだ、誰のことも傷つけてないよ」
威圧的な芹那の声をかき消す勢いで、真衣香が放ったセリフに芹那だけではない。
坪井も、そして隼人も何を言い出すんだろうと目を丸くしながら押し黙る。
「だ、だから……この、まま……坪井くんの気持ちに応えるか、恋人の元に戻るのか決めて」
「は?」
「決めたら……もうそこから他の人を標的にしないで、ちゃんと自分のことも相手のことも大切にしてあげてほしいよ」
止まっていた涙が、また出てきて声が震え出す。
真衣香の声が震えたことに気がついたのだろうか。
二人の会話を静観していた坪井だったが、ここにきてようやく声を発した。
「……立花、ごめん。さっきから多分ちょっと誤解してる……と、思うんだけど」
「じゃ、邪魔してごめんなさい。元はといえば逃げた私が悪かったから……もう、いいの。覚悟して言ってるから」
「違う違う、聞いて立花!」
「え、待って、だから真衣香ちゃんは何言ってるの?」
真衣香の発言に芹那も思わず口を挟んだ。
「大丈夫。あの、でも、目の前で見届けるのまだちょっと悲しいから……わ、私すぐ帰るし、その後でお願いしてもいいかなぁ」
三人が噛み合わない会話をしている横で、隼人が呆れたように大きく息を吐いて言った。
「だから涼太~。自分の彼女に見せれないようなやり方、やめとけって言ったろ俺」
真衣香は、まだ聞いたことがなかった、にこやかなばかりだった隼人から棘のある声。
「……反省してます」
「俺、もう無理泣いちゃう。いい子すぎない?」
隼人が目をこする仕草を見せながら真衣香の頭を撫でる。暖かくも豪快な動きで。