いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
すぐに声の雰囲気を変えて、空気までも変えてしまおうとする。軽い会話の中にも芯が通っていて。
(さすが坪井くんの、いちばんの友達だよね……敵わないや)
こんな中、真衣香は冷静に中学時代から今日まで続く二人の絆を少し羨ましく思った
「触るなって」
「え、青木に乗り換えたんでちゅよね、涼太ちゃん。何様の発言でちゅか?」
馬鹿にしたような隼人の発言に言い返そうと口を開いた坪井が、大きく息を吸い込んで、その言葉を飲み込んだようだ。
そして、気まずそうに真衣香を見て頭を下げた。
「ごめん……えっと、さっきのキスは」
「……う、うん」
肩を震わせた真衣香を、見下ろす坪井はどうしてなのか。酷く痛そうな顔をする。
「お前が思ってるようなじゃなくて。青木を必要以上に傷つけようとしたから、その仕返しされた」
「……し、仕返し? キス……すること、が?」
口をあんぐりとして聞き返した真衣香に「そ、嫌がらせ」と、坪井の発言に同調するよう芹那が言う。
その後、また口を開いた坪井だが、どうにも歯切れが悪い。
「今日のことも、全部勝手に決めてごめん……。逆の立場だったらって置き換えて色々考えるようにはしてたんだけど……その」
言葉に悩むように頭を掻きむしる仕草。
真衣香は、まだ状況が飲み込めず、ぼんやりとその様子を眺めるしかなかった。
「青木の、お前にしようとしてたこと……知ってから、置き換えて考えるとか……忘れてたし。そもそも、お前を基準にしないと、いいも悪いもよくわかんないんだよね。無神経なんだと思う、俺マジで」
「え、っと……」
「俺らは、今日はお互いに相手を陥れてやろうって、半分それが目的だったし」
「陥れる?」と、真衣香がますます訳がわからないといった様子で聞き返すと、坪井らしくない。
下を向いて「あんま、お前には言いたくないんだけど」と小さく前置きを零して、言う。
「こんな遠くまで青木の言うこと聞いて連れてきたのは、言いなりになってる俺に浸ってるとこ……突き落としたかったからで」
「つ、突き落とす……」
「青木は青木で、男に襲われた後のお前に……多分、ホテルで俺と一緒のとこの写真でも送りつけようとしてたんだと思うよ」
どんな言葉で返せばいいのか戸惑う真衣香を前に、何故か発言しているはずの坪井がそれ以上に戸惑った顔をしている。
「あ、いや。青木は俺に気が残ってるとかじゃなくて単純に俺への嫌がらせが大半で……お前が言ってたような運命とか再会とか、そんな雰囲気のじゃ全然なくて」