いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
腰から服の隙間に手を入れて素肌を探っていく、外気を纏った、まだ少し冷たい手。
ぞくりと背筋を伸ばすと、張り詰めた背中を指が這う。
「坪井くんに……来て欲しかった。芹那ちゃんに、会いに行くより……」
「わかった、もう絶対しない」
ブラのホックに手をかけて、慣れた手つきで外してしまう。
「お前は、俺以外の男なんて知らなくていい……知らないままがいい、ずっと」
芹那の企みの話をしているのだろうか。
安心したような声に、少しだけムッとしてしまう。
「ふーん、坪井くんはこんなに慣れてるのに?」
悔しくて言い返すと「うっ」と小さく呻き声を上げた。
「……慣れてるのに、です」
「狡いよね」
「……ごめん。でも」
言いながら、真衣香を抱き上げた坪井がぐんぐんと足早に部屋の中へ急ぐよう歩き出した。
「これから先の俺は、全部お前の好きにして」
「ちょっと、やだ! 離して、お、重いから……!!」
しがみつきながらも、ポコポコと背中を攻撃すると「重くないよ」と笑いながら、ゆっくりと身体が解放された。ホッとしたのも束の間、すぐに視界が覆われてしまう。
ギシッと何かが軋む音。
降ろされたのはベッドの上で、何かが軋んだ音はベッドのスプリング。
真衣香はもう既に坪井の腕の中だ。
「あと、他の人からの着信とかごめん、番号も変える。元々青木に教えた時点で今日が終わったら変えようと思ってたから」
「え?」
「あ、スマホね。別に、入ってる連絡先の中で必要な人なんてほとんどいないから。お前が、気にしてるのもわかってなかった。俺の中では顔も覚えてない女ばっかりだったから」
しゅんとしたような声は許しを請うように弱々しくなっていき、だけども真衣香に触れる手の力は決して弱められることはなかった。
「それでも嫌なの、もう私以外の女の人と二人で出かけたりしないでね……今日みたいに」
「うん」
真衣香の手を取り、指に、手首に、キスを繰り返して頷く。
「やきもちばっかり妬いても呆れないで、嫌いにならないでね」
「……嫌いに? 俺が、お前を?」
聞き返されて、当たり前のように真衣香は頷く。
すると「はぁーーー」なんて。
長い長いため息が真衣香の耳に届く。
思わず身体を震わせた真衣香を思い切り抱き締めて、胸元にぐりぐりと顔を押しつけられた。
「な、何!?」
「お前ってほんと、俺を喜ばせる天才だよね」