いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
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(って、これからお前大変だぞ、頑張れよって時に坪井だからな。 あいつクソだろマジで)
八木はハンドルを無意識にキツく握りしめ、脳裏に浮かんできた坪井に舌打ちをする。
人間なんて、損得勘定の上で成り立ってるものだと思っているし、どいつもこいつも、もちろん自分が一番可愛い。
(俺も含めてな、人間なんてそんなもんだ)
だから、先ほどまで目の前で見ていた真衣香の姿と声がどうしようもなく心に絡みついて。
離れてくれなかった。
「はー、ビビるっての。あんな女、いるもんなのか」
思い返し、吐き出した。
(いや、ねぇだろ普通。 罵る言葉の一つや二つあっても……まさかあんなズタボロにされた相手気遣わない)
相手が坪井だということ、また真衣香のゼロに近いだろう男への耐性、経験値。
そして倒れた真衣香を運んだ後現れた、坪井への態度。
総合的に考えて、高確率で真衣香に非は無い。何もわからず、わからないままドン底に落とされたはずだ。
そんな彼女の……
流す涙、表情、震えながらも優しい声。
ずっと見ていたいと、熱く締め付けるような感情が八木の身体を支配して動作を止めさせた。
自分でも信じられない衝動だった。
自分の、この身体のどこから湧き上がってきてるというのか。