いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「ああ、杉田さんも……立花さんだったかな。 君も朝から悪いね」
「いやいや、こちらこそうちの立花がご迷惑をかけたみたいでね」
ドクドクと心臓が鳴っている。
言葉こそ怖くはないものの、ワックスで程よく固められた髪の毛、細いシルバー縁のメガネ。
切れ長の一重まぶたがギロリと真衣香を見た……ような気がする。
30代後半だという営業部長である高柳は、異例のスピード出世をしている凄腕な、男性だと。
(噂程度にしか知らないけど、怖い……)
「……申し訳ありませんでした」
杉田の言葉に続き、真衣香も謝罪の言葉を発し頭を下げる。
「いや、俺もうちの営業事務から聞いただけなんだが。 君がどうしてもスキルアップの為手伝わせて欲しいと、頼みこんできたとか」
「……え?」
「それに対して、あまりにも無責任だと騒いでいてね。まあ、こちらとしては確かに余計な仕事が増えましたけど」
(頼みこんでなんてない)
と、咄嗟に思ったが鋭い瞳を前に声にはならず。
ビクついてそのまま黙っていると、高柳は言った。
「まあ、座って下さい」
促され、杉田と共に正面に着席する。
「今回のことは、数字としての被害は少ないです。 今のところは」
「……はい」
低く落ち着いたトーンの声は、イメージのものよりも優しく感じたが。
それでもヒリヒリとした緊張感が真衣香の心拍数を上げていく。