いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「も、申し訳ありません、わかって……」

『わかっているつもりです』

そう、言い切りたかったはずの言葉は背後の扉が乱暴に開かれた音で、かき消される。

その後に聞こえてきた、場にそぐわない明るい声。

「っと! わー、マジですか。 マジでいる。部長勘弁して下さいよ〜! 何してるんすか、暇ですか?」

その声が、真衣香の張り詰めた心を一瞬で柔らかくした。

振り返らなくてもわかる、声。
今、聞きたかった、声。

(――坪井くんだ……っ)

スカートの上で握り締めてた手から力が抜けていく。

嬉しい。
ごめんなさい。
怖い。
合わせる顔がない。
会いたかった。

いくつもの感情が、駆けめぐる。
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