いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

爽やかで陽気なイメージの坪井から、あろうことか上司の発言に対して舌打ち。

それをキッカケにだろうか?

坪井の場を和ませる、聞き慣れたいつもの声が。
段々と部長の声色へ近付いていく。

そう、冷静なイメージと言えば聞こえはいいが。

(なんてゆうか、冷たいというか……)

何にせよ、坪井にそんなイメージを抱いたのは初めてのことだった。

「それに関してはめちゃくちゃ反省してます」

「反省、ね。 楽観的でいたい、その場しのぎでやり過ごしたい。 そうやって絵に描いたように〝臭い物に蓋をする〟お前がどんな反省をするんだ?」

どこか試すような言い方をする高柳の言葉に、これまでテンポ良く進んでいた会話が数秒途切れる。

高柳の発言に何か思うところがあるのだろうか。
その数秒のあいだに坪井の感情の乱れが、真衣香には見えた気がした。

「…………とりあえずこの件は解決済みです。山口さんが連絡くれたんで朝寄って仕入れ担当者と話つけてきました」

「何を?」

「陳列配置については変更ありません、前々から値切られてたんでそれ飲む形で金で解決です。穴埋めは企画進めてるPB商品、もうちょい下げれそうなんでその辺で」 

「一課に話は通してるのか?」

「ああ、一課の得意先と角が立たないようにってやつですかね。 話つけましたよ、その卸業者からの返品受付は甘くして経費一部こっちで見ます。 それでもギリ利益出ます」

しかし、会話が途切れたのも先ほどのほんの数秒だけ。
そこからはポンポンと恐ろしい速さで会話が進み、真衣香は内容を把握するどころではなく、ただテレビの中のセリフをなんとなく聞いている。
そんな感覚に陥っていた。

会社で坪井を見かけることはあったし、この間のようにデスクで作業してる姿を眺めたりもした。

(で、でも違う)

その、どれとも違う。
営業部長と話す坪井は、声のトーンから目つきまで。
記憶にあるどの坪井とも、違った。
< 67 / 493 >

この作品をシェア

pagetop