いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「なぜ余裕なのかわからないが、坪井。 解決しないならしないで彼女は本当にどこぞの営業所へ飛ばしたぞ。 それでうちが円滑に回るならな」

(あ、やっぱ、そこは本気だったんだ)

場の空気が和み、少し安心していた真衣香だが高柳の言葉にヒヤリと再び緊張を取り戻した。

「いや、させないですよ〜って言っても、今回はちょっと焦ったんで言われる程余裕ないっすね、ぶっちゃけ」

声色から、笑顔の坪井を想像して、その表情を確かめると。
陽気な声には似合わない、冷たい表情が見えた。

そして坪井と対照的に愉快そうに笑む高柳。
真衣香はマヌケにも口を開けたまま2人を交互に眺めるしかない。

(高柳部長と坪井くんは仲がいいの悪いの? 今は談笑中なの、怒られてるの? 怒ってるの?)

そんな疑問でいっぱいの真衣香のことなど気にもしない様子で、相変わらず上機嫌な様子の高柳だ。

「ああ、それから彼女を知っているのかというお前の問いに、もうひとつ答えをやろうか? 」

「えー、別にいらないような気もしますけど言いたそうなんで聞きますよ。 なんですか?」

答えた坪井に、やれやれといった様子で肩をすくめたが。
ただのポーズだったようで、さして気にした様子もなく高柳は言う。

「総務じゃない〝お前にとって〟の立花さんを知ったのはタイミング良く、今回の件の発端の日だったな」

高柳の言葉に坪井が小さく唸りながら後頭部をぐしゃっと掻いて、真衣香の斜め横でイスを引く。
そして、そこへ座りながら言った。

「いやぁ〜、はは。 それタイミングよくないでしょ、だいぶ悪いっすね」

「いや、いいだろう。 仲良く飲食店に入っていく姿を見つけてね。 仕事が立て込み出したら独りが大好きになる、お前がね」

「はいはーい、わかりました、もういいです」

坪井は、両手を挙げいわゆる降参のポーズをしてみせた。

真衣香と、一緒に来てくれていた杉田はポカンとするばかりの空間で。
また新たに見つけた、坪井の表情だった。

< 69 / 493 >

この作品をシェア

pagetop