いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
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その後外出の予定があった杉田と高柳がミーティングルームの戸締りを真衣香と坪井に指示して、それぞれ仕事に戻った。
気まずい気持ちと嬉しい気持ちをどう表現しようかと悩みながら隣に座っている坪井を見て、声をかけてみる。
「つ、坪井くん……あの、おはよう」
と、ごく普通の朝の挨拶をしてしまい真衣香は己の会話力の無さに頭を抱えたくなった。
「うん、おはよ、立花。 ちょっと久しぶりだね」
目を細めて笑顔を見せた後、坪井は少しだけ眉を下げる。
何故だろう。
困ったような、顔をしている。
「……そうだね、ちょっとだけ久しぶり」
言いたいことが山ほどあったはずだが、うまくまとめることができず。
(待って待って、まず謝ろうよ私さぁ!)
「ごめんな。 余計な事に巻き込んだし部長も嫌味っぽい言い方してたんでしょ」
(ああ、ほら先に言われた)
自分を叱咤しながら高柳のことを思い返す。
「嫌味っぽい……」
確かに言われてみれば嫌味っぽかったかもしれないなぁ、なんて思い返してみるが。
(それにしても……)
巻き込んだ、という表現には違和感を感じた。
それを言うならば真衣香の方ではないだろうか。
自分のミスに巻き込んでしまって申し訳ないと。
モヤモヤと考え込んでいると、目の前にスッと影が落ちる。
見ると、至近距離に坪井の顔。
ジッと真衣香を見つめて、前髪をサラリと梳かせた。
「……ね、立花。 昨日寝れなかった? いつもより目が腫れぼったい」
「え!?」
慌てて目元を隠そうとするも時遅しとは、まさに今このこと。
手首を掴まれ、それを許してもらえない。
「さっきも、泣きそうになってた」
「ち、違う違うの、あの」
仕事中に自らのミスで叱咤され、挙句泣きそうになるなど。
恥ずかしすぎて、まさか坪井には知られたくなかったというのに。