いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「ごめん、泣きそうになって当たり前だよ。 あの人に正面切って睨まれたら俺だってビビるし」
「え、坪井くんでも!?」
「なんだよ、そんなに驚くこと? 立花さー、俺をなんだと思ってんの」
ピッと指先で弾いて真衣香の鼻を攻撃して笑った後、また眉を下げた。
今日は、こんな表情をよく見せる。
「部長さ、異動させるとかまで言ったの? お前に」
「あ、それは、そのチラッと……」
掴まれている手首、坪井の手に力が込められた。
小さく息を飲む音が聞こえる。
「あー、クソ、マジか。 普通にミスっててもそれ堪えるのに、濡れ衣で言われたんじゃな……」
「濡れ衣?」
「うん。 俺が甘かった、今回ばっかりは部長の言う通り。こんなすぐバレる陰湿なことわざわざしてくるとか思ってなくてさ」
(な、なんの話だろ)
わからないまま曖昧に頷いた。
「そもそもお前をどうにかできたとしてもさ、自分の会社の信用も落として、ありえないでしょ。 引くわ」
「…………あの、坪井くん」
「何?」と呼びかけてきた真衣香の声を待つように首を傾げた。
「……えっと確かに、小野原さんは私が不慣れな仕事を渡してきたのかもしれないけど……それは陰湿というか、その、私が嫌われてるだけというか」
(坪井くんの近くにいたから目をつけられてるだけというか……、女同士の争いというか……)
ポカン、と坪井が首を傾げたまま真衣香を見る。
下から覗き込まれるような形でジッと見つめられ、居心地の悪さと緊張を覚えた。
「あの、坪井くん……?」
「えー、いやいや……え、マジで? 何、そーゆうこと?」
「そうゆうことって?」
心底驚いたとでもいうように、何度も瞬きをしながら真衣香を見る。
見る、というよりも眺めると言った方が当てはまるかもしれない。
そんなふうにマジマジと真衣香を見る。